真・MFC千夜一夜物語 第227話 MFCの制御不良とは? その9

もう一つのMFC千夜一夜物語である日本工業出版さんの「計測技術」誌の「マスフロー千夜一夜物語<質量流量計の基礎>」という連載も2017年1月号(12/26発売)で連載30回を迎えさせて頂きました。
1月号では、ブロンコストハイテックさんの最新コリオリ式マスフローによる微小流量測定&制御、そしてギアポンプ等の流量制御機器を制御したドージングシステムを紹介しています。
mini cori-flow m
本ブログと併せて、宜しくお願い致します。

今回は「ガス導入時のオーバーシュートが過大」ですね。

・ガス導入時のオーバーシュートが過大
前回と同様にこの事例の大半は、MFCのバルブ設定に問題があります。
PID定数の設定が不適切な場合に生じます。
そもそもMFCに搭載されている熱式流量センサーは、流体が流れる際の熱の移動をとらえて、それを流量値に変換して出力しています。
MFCの応答性能は流体に非接触な巻線タイプで1秒、接触するMEMSやインサーションタイプでは数百ミリ秒という高速応答を謳っていますが、これはセンサーの生出力の応答性ではありません。
そんなに早く熱が移動するわけはないのです。
あくまでMFCというパッケージで流量制御をさせるために、センサーの生出力に対して、見かけ上の流量出力を速く出させているだけなのですね。
PID制御とは、P=Proportional(比例)、I=Integral(積分)、D=Derivative(微分)で、それぞれが「現在の偏差」、「過去の偏差の累積値」、「未来の偏差の将来予測」に基づいて流量出力(PV)=流量設定入力(SV)になるよう制御を行うのですが、MFCの場合、応答が遅いセンサーを使用するがために未来の偏差予測が重要になります。
この調整が最適ではなく、どちらかというと過敏な調整を施した際に、オーバーシュートは起きやすくなります。(その逆の現象が次項で説明する応答遅れです。)
このPIDの調整不足は前回説明したハンチングの原因にもなっています。
そしてハンチングと同じく、調整が不適切である理由はMFC側だけにある訳ではありません。
MFCの仕様にある圧力条件よりも供給圧が高い場合や、差圧が大きい場合、仕様ガスよりも軽いガス、例えば窒素(N2)のMFCにヘリウム(He)を流そうとした場合に発生しやすいです。
もし仕様の違いが原因ならば、速やかに圧力条件を再調整したり、適切なガス種のMFCを使用するようにすれば問題は解消します。

実はMFCの圧力条件をMFCの入口、出口直近のそれぞれの圧力の事と解釈せず、一次圧=ボンベレギュレーターの供給圧力、二次圧=下流のチャンバー圧と勘違いしてオーダーしてしまうパターンは非常に多いのです。
これではボンベレギュレーターからMFCまでと、MFCからチャンバーまでの圧力損失が無視されてしまっています。
無理からぬことでMFCの直近には圧力センサーや真空計が無い場合も多いので、遡って、または下りきった場所にある表示を見るしかないこともあり、本職ではないユーザーがその間の圧力損失を計算できる訳もないのです。

仕様上の問題を解消できず、どうしてもMFC側で対応させたい場合は、MFCを再調整するしかありません。
幸いデジタル化が進んだ今の世代のMFCは、アナログモデルよりも簡単に(と、いってもPIDの設定はその再現性に置いて難しいところもありますが・・・)できるデジタルツールが配布されています。
下図のBronkhorst HIGH-TECHのMFCの最適化を行えるソフトウエア”FlowPlot”等はその進んだ形の一つです。
170116_01.jpg

ユーザーはMFC以外に通信ケーブルとRS232C→USBコンバーターを購入して、WEBからこのソフトを無償ダウンロードするだけで、本格的なMFCの調整が可能になります。


「ユーザー環境でMFCの微調整がPCでできる。こんないいことはないなぁ。昔はトリマー回して大苦戦だったのに・・・」と思うDecoは年寄りなのかもしれませんね。

次回はこのオーバーシュートが、こういった調整を用いても解消しない、つまりMFCの責任ではない配管システム側の問題の場合を説明しますね。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】by Deco EZ-Japan

テーマ : ものづくり
ジャンル : ビジネス

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プロフィール

EZ-Japan(イージージャパン)代表 黒田 誠

Author:EZ-Japan(イージージャパン)代表 黒田 誠
MFC千夜一夜物語のDeco こと 黒田 誠 です。
2014年6月より流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”EZ-Japan(イージージャパン)として開業いたしました。

流体の流量・圧力・温度に関わる計測・制御技術の伝承と、新技術のご紹介を行うエバンジェリスト(伝道師)の仕事を生業といたしております。

日本工業出版さんの「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載を続けさせて頂いています。

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