真・MFC千夜一夜物語~第1期エピローグとこれから

平素は真・MFC千夜一夜物語をお読み頂きまして、ありがとうございます。

 元々は商用ブログに週一ペースで連載されておりました「MFC千夜一夜物語」及び「新・MFC千夜一夜物語」 計135話分を、小生が病に倒れた後に個人ブログで再掲載する企画として始めたこの連載も135話目を迎えることができました。

 身体が動くようになり、通常生活に戻るためのリハビリと共に始めたこの連載ですが、無事当初の目標にたどり着けたことを大変うれしく思っております。
このような拙いブログへ頻繁にアクセス頂いている方々の存在や、お会いしり、メールを頂いた方々から「ブログ、読んでますよ!」と声をかけて頂いた事が大いに励みになりました。
この場をお借りして御礼申し上げます。

また、取材や資料提供に応じて頂き、個人ブログへの再掲載に当たっても快諾頂いた方々へも、改めて御礼申し上げます。

 誤字・脱字の修正とアップデートのみで構成する予定でした真・MFC千夜一夜物語も、振り返れば全体の1/3は新規に書き直したり、完全に新作に差し替え、連載の構成も変えました。図表に至ってはほとんどが新作です。
それだけMFC千夜一夜物語と新・MFC千夜一夜物語は、読み物としての完成度が低かったということだと、Decoの力量不足を痛感しております。
 また連載後半は「もっと書きたい」という意識が強くなってきて、病で奪われた気力=活力がまた戻ってきた事を実感する事もできました。

 本来、真・MFC千夜一夜物語全135話の掲載でこの連載の使命は終わる予定でしたが、10月からも新規に真・MFC千夜一夜物語(第2期)の連載やその他の企画も立ち上げていくつもりでおります。

これからもよろしくお願いいたします。

【あなたにMFCの夜が来る~真・MFC千夜一夜物語】 by Deco EZ-Japan

テーマ : ものづくり
ジャンル : ビジネス

真・MFC千夜一夜物語 第135夜 日本はMFCの第二の故郷です

MFC(マスフローコントローラー)の生まれ故郷はどこなの? というお話です。

 連載開始時にMFCはNASAのアポロ計画のスピンオフ技術で作られた、という説があることはお話ししました。
となると流れ上、当然アメリカの企業がまず製品化したわけで、先週紹介したBrooks、そしてTylan、Unitといったメーカーが先駆けに位置します。
つまりMFCの生まれ故郷はアメリカということになりますね。

 そしてMFCのもう一つの故郷、それは我らの日本です。
アメリカで開発された製品を、改良してより高い品質と、安いコストで提供するのは、高度成長期の日本のお家芸でしたMFCでもまさにこれと同じ現象が起きたのです。
米国Tylanの日本法人から分派した日本アエラ、堀場STEC、日立金属(サム・リサーチ)、リンテック、最近では山武、フジキンといった企業が、アメリカで生まれたMFCに、ピエゾバルブ、メタルシール化、ウルトラクリーン対応等の日本独自技術を付加することで、MFCを大きく成長させたのです。
つまり日本はMFCにとって第2の故郷なのですね。

 この2つの国でほとんどのMFCが開発されました。
(一部、ドイツ、オランダを生まれ故郷とするMFCもあります・・・) 
開発したアメリカはさておき、なぜ日本だったのでしょうか?

1.日本の半導体産業がMFCを育てた
 Decoがこの業界に営業で入った頃、NHKの「電子立国日本の自叙伝」というドキュメンタリー番組のビデオを会社で見せられたものでした。
営業研修の一環として用いられるくらいMFCのお得意様として半導体産業は大きな存在(一説には総出荷額の80%)だったのです。
そして当時の日本の半導体デバイスメーカ-、半導体装置メーカーさんは、プロセスガス制御の重要パーツとしてMFCの国産化による安定供給、高機能化を強く望んでいました。
装置のたかが一部品であるMFCを、その装置の最終ユーザーさんが気にかけて、わざわざ評価試験を行い、メーカー、機種選定をするというのは、他の部品産業ではなかなか見られない光景です。
そんなお客様と一体になった切磋琢磨の環境が日本のMFCメーカーを成長させていったのだと思われます。

2.日本の先端材料がMFCを育てた
 半導体だけにとどまらず日本の先端材料開発力は目を見張る物がありました。
そんな中で開発された素材(ピエゾ素子、メタルシール、メタルダイヤフラム、デジタル化、MEMSセンサー・・・)を、MFCメーカーは、産みの苦しみを味わいながら製品化することで、自社製品のストロングポイントとしてアメリカ製MFCをの差別化を図っていきました。
それぞれのメーカーが看板となる技術でしのぎを削る、華々しい戦いが、切磋琢磨してメイドインジャパンのMFCの地位を押し上げていったのでした。

3.日本の職人がMFCを育てた
 華やかな材料開発と比べて取り上げられることが少ないのですが、むしろ本当の意味で日本の強みというのはMFCの接ガス部の主要素材となったSUS316Lの加工、研磨を支えて頂いた日本の加工職人さん達の奮闘であったと思えます。
ステンレスという決して加工しやすいわけでもなく、工具の消耗も早い材料を相手に、ひたすらコンパクトに、デットボリュームの少ない構造にするために難しい加工を要求するMFCのボディやフランジパーツを削りだしてくれたのは、関東・関西の決して企業規模は大きくない金属加工会社さんでした。
日本でなくてはできない緻密な、レベルの高い加工技術にDecoも何度も救って頂いたことがあります。

 日本の半導体生産高がアメリカを上回り、「ただ模倣して成り上がった」と陰口をたたかれた時代に、実は決して真似だけではない「日本の力」があったのと同様に、MFCも日本の材料や職人さんに支えられ大輪の花を咲かせていったのでした。

 言い忘れましたが、そんなMFCの販売に情熱的に取り組まれた営業の先輩諸氏がおられます。
皆さん個性的で、でもお客様とMFCという製品に愛情と誇りをもった素晴らしい方々です。

このお話の最後は、そんな方々に改めて敬意を表したいと思います。


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真・MFC千夜一夜物語 第 134夜 日本半導体の敗戦=MFCの敗戦なの?

MFC(マスフローコントローラー)の置かれている現状を、お話していきたいと思います。

 アポロ計画の産物と言われるMFCという産業用機械部品も、既に誕生して、数十年を経過して、熟成された、言い換えればピークを過ぎたものとなってきています。
連載で何度か取り上げましたが、MFCの主たる市場は半導体産業(広義で液晶産業も含む)です。
半導体は、最盛期には、業界出荷額の約8割近くを占めるとてつもなく大きな顧客でした。
特に90年代、日本の半導体産業が世界を制覇した時代(半導体売上高の世界をNEC、東芝、日立製作所の3社で、30%近いシェアを占めていたころです)、その拡大する日本市場を狙いMFCの新規参入メーカーも相次ぎ、デジタルMFC、液体MFC等、エポックメイキングな技術も世に出て、非常に華やかでした。

 ところが20年後、日本半導体はお家芸のDRAMでは韓国、台湾勢の価格攻勢に敗れ、高品位なMPUではインテル独壇場・・・ついにエルピーダメモリの会社更生法申請からマイクロンの傘下での再生、ルネサス、富士通等国内半導体工場の相次ぐ売却、閉鎖発表・・・と、日本半導体産業のポツダム宣言受諾か?とも思える状況になってきています。

 当然、MFCメーカーさんも苦しい状況を迎えつつあります。
具体的にはM&Aによる企業統合の進行です。USAではいち早く、老舗UNITからの流れは、これまた老舗のTylan(Tylan-General)からの流れと統合され、さらにBrooksに一本化され今に至ります。
日本では、日本Tylan(日本アエラ)という、かっては国内シェアトップメーカーが買収の末、今は日立金属(SAM)に組み込まれました。

これはMFCユーザーである皆様にも決して無関係な流れではありません。

今は存在しないブランドの古いMFCをお使いの場合、最悪「修理メンテナンスをもう受けられない」という事件が発生します。
買収した企業は、生産者責任を果たす社会的道義もありますが、それ以上に事業の合理化を図り、利益を出せる体質にする必要があります。
その為、古いブランド製品群のEOL(End Of Life)=ディスコン(廃盤)を進めていきます。
この動きは日本よりUSAメーカーの方がドライで、びっくりするくらいドラスティックに進めてきます。
当然、「互換機はこれですよ」という案内通知はされるのですが、必ずしも完全互換でなかったり、プロセス条件に変動が出たりという、ユーザー側の負担をゼロにすることはできない条件が付いたりします。
装置を構成する「部品」であるMFCの場合、「性能が向上しているのだから、互換品だろう」という考えは、必ずしも正解ではないのが、事を難しくしているのです。

そういった動きの中で、ユーザーの皆様もどうぞ「自衛活動」の準備をしていただきたく思います。
Decoからは、以下の内容をお奨めします。

・使用しているMFCの供給元のサービス・メンテ状況の確認

・使用中のMFCの互換品=後継機の選定と評価

・社内校正器等による日々のMFCの状態管理

・適正な保守在庫の保持


 10年前には故障したMFCの代替品をすぐ持ってきてくれたメーカーがあったかもしれません。
でも、これからはわかりません。
むしろ10年前の対応は、スペシャルサービスだったのかもしれないのです。
保守管理予算も苦しい中で難しい内容かもしれませんが、万事は転ばぬ先の杖です。

「もう昔とは違うのだ」というほろ苦い現状認知を頂く必要があるのです。


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真・MFC千夜一夜物語 第133夜 MFCのライバルは? VS APC その2

MFC(マスフローコントローラー)のライバルになるもの、APC(Automatic Pressure Controller)のお話です。
APCにはセンサーの位置で大きく分けて2つの機種があります。

① 背圧制御型APC
 このタイプは圧力センサーが上流側にあります。
つまり一般的なMFCの流量センサーの位置ですね。
(実はMFCでもバルブ→センサーの順番で逆に配置にしたものもあります。そのお話はまた別章で・・・)
圧力センサーがAPCより上流の圧力を測定していますので、その圧力を一定にしたい場合に使用されます。
具体的には真空チャンバーの排気系に使用して背圧制御をしたり、ある圧力で封入されるべきワークのガス抜き弁として作動させたりします。
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 ただ高度な真空装置では真空ポンプで高い真空度まで排気を行う場合、MFC型の流量制御バルブを搭載したタイプではなく、バタフライタイプのバルブと、真空計、圧力制御するコントロールボックスとの組み合わせで「APC」として使用されるのがほとんどです。
理由としては、MFCの流量制御バルブタイプでは圧力損失が大き過ぎることと、圧力計隔膜の変形で生じる静電容量変化で検出するキャパシタンスマノメータタイプの高分解能な真空計を独立して運用するためです。

 また、後者の圧力封入用途は、伝統的な手動背圧弁で事足りる用途もあります。
APCの出番は遠隔制御が必要な場合や、ログを残したい場合ですね。
(こういうところはフロート式流量計とMFCの関係に似ていますね。)

② 供給圧制御型APC
 もう一方は、上流側に制御バルブ、下流側に圧力センサーを配置したタイプです。
このタイプは下流側の圧力を一定に保つように制御しますので、供給圧制御型と言えます。
一般的なレギュレーターとMFCの関係に似ていますね。

 この用途の場合、少し気をつけなくてはいけないことがあります。
前回お話ししましたようにAPCとMFCは同じ流量を制御するバルブを備えています。
そうするとMFCが流量を流そうとしてバルブを開くと一時的にMFC上流=APCの下流からガスが多く払い出されますので、この部分の圧力が低下します。
低下した圧力をAPCの圧力センサーが検知すると、今度はAPCのバルブを開くことでAPCの上流から不足したガスを流して圧力を回復させます・・・
こういう役割分担が上手く作動している場合、つまり比較的設定流量、圧力が一定で流す条件で、MFCの下流も、APCの上流も圧力変化が少ない場合は良いのですが、そうでない場合、あるタイミングでMFCとAPCの制御がケンカを始めてしまうことがあります。

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 実際APCとMFCが殴り合いを始める訳ではないのですが、最悪両方の制御がばらついて設定が上下し落ち着かなくなってしまうような状況に陥ってしまう事もあります。
これは、両者が同じ流量制御する方式の制御バルブを使いながら、センサーの応答速度が遅いサーマル式流量センサーと、比較的速い歪み検出型の圧力センサーを搭載しているのも一因です。
(この問題は実は機械式レギュレーターとMFCの間でも起きます。レギュレーターとMFCの配管距離が極端に近く、MFCに払い出すガスのボリュームのバッファーが少ない場合に発生しやすくなります。)

 こういった現象が生じた場合、制御系に精通した技術者がおられたらなんとか制御をなだめすかしてもらえるのですが、例えば以下のような選択もあります。

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チャンバーにガスを供給するにあっての条件にもよりますが、APCで供給圧力を制御して一定時間にある量のガスをチャンバーに送ればよいのならば、MFC側をあえてMFMにして流量測定だけをさせてロギングしおくという手もあるのです。

 APCによる供給圧制御の応用例として、供給圧制御型APCは多系統のMFCの上流において、MFCの一次圧が乱れた場合に発生する流量スパイク現象を緩和させる提案等もされています。

 このようにAPCというMFCの従兄弟は、MFCとは微妙な仲であると言えます。
機器選定する場合、「なぜAPCが必要か?」「なぜMFCが必要か?」を熟考の上で決定頂くと良いと思います。

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真・MFC千夜一夜物語 第132夜 MFCのライバルは? VS APC その1

MFC(マスフローコントローラー)のライバルになるもの、今回はAPC(Automatic Pressure Controller)です。読んで字のごとく「自動圧力制御器」です。

*ここでのAPCという言葉は、MFCをベースに構成された製品に限って使用しています。
真空計とバタフライ弁の組み合わせでチャンバーの排気を制御するAPCとは別物とお考え下さい。


 実はAPCは構造的に見るとMFCのライバルと言うより、従兄弟みたいな関係なのです。
下図を見て頂くとわかるのですが、構成上はMFCの流量センサーが圧力センサーに変わるとAPCです。

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MFCが「流体の流量を測定し、設定された流量になるように制御バルブ流量を制御する」のに対して、APCは「流体の圧力を測定し、設定された圧力になるように制御バルブで流量を制御する」のです。

あれ?Decoさん 言い間違えていませんか?

いえ、正しいのです。

さすがに舌足らずなので、もう少し補足して記しますと、APCは「流体の圧力を測定し、設定された圧力になるように制御バルブで流量を制御し、その制御した流量を送り込んで圧力を調整する」機器なのです。
「流体の圧力を測定し、設定した圧力にするのに必要な流量を制御バルブのリフト量を自動的に可変して流し続ける」機器とも言えますね。

 APCに搭載されているバルブはMFCと同じ流量制御用のものです。
そのバルブ開度を調整すること=圧力損失を可変することで、結果的には圧力を作り出すのですが、APCが制御して生じるのはあくまで流量であり、圧力は二次的なものであるという点で、同じ圧力を調整する機器であるレギュレーター(調圧器)の弁構造とは少し異なります。

*レギュレーターの構造
レギュレーターは機械的な構造で、設定した圧力にガスの供給圧を保つ役割を果たしています。
ダイヤルとスプリングがあり、出口側の低圧部屋と、入口側の高圧部屋とダイヤフラムで隔てられて設置されています。
低圧部屋の圧力=大気圧+スプリングの力というバランスを保つようになっています。
何らかの理由で低圧部屋側の圧力が低下するとスプリングに押されてダイヤフラムに繋がる高圧側の部屋との間の弁が開いて、ガスが流れこみ圧力を上げます。
そして圧力が上昇し、バランス状態が再現すると弁は閉じます。


 APCの制御方法はMFCと同じです。
電源表示設定器から設定信号(制御したい圧力値)を入力し、出力を表示します。
出力信号はMFCとは異なり、搭載する圧力センサーの種類により、0-5VDCではないものもあり、0-10VDC、1-5VDCと多彩だったりします。

 APCがMFCと異なるのは、供給圧制御型と背圧制御型の2種類が存在することでしょう。
これは圧力センサーと制御バルブの位置関係で分類されます。
詳細は次回ご説明しましょう。

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プロフィール

EZ-Japan(イージージャパン)代表 黒田 誠

Author:EZ-Japan(イージージャパン)代表 黒田 誠
MFC千夜一夜物語のDeco こと 黒田 誠 です。
2014年6月より流体制御機器マスフローコントローラーを中心に”流体制御関連の万(よろず)屋”EZ-Japan(イージージャパン)として開業いたしました。

流体の流量・圧力・温度に関わる計測・制御技術の伝承と、新技術のご紹介を行うエバンジェリスト(伝道師)の仕事を生業といたしております。

日本工業出版さんの「計測技術」誌で”マスフロー千夜一夜物語”の連載を続けさせて頂いています。

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